サックスお役立

Jazz saxophone 吹きの散歩道

ジャズサックス問題点の私的対処方

〇ツー・ファイブ(Two-five)の功罪

経験者向けの内容です。おおげさなタイトルになっていますが、実は練習するにあたっての注意喚起です。しかも、 ツー・ファイブの練習についてのみです。ごく一般的にジャズのアドリブについての練習を始めようとしたときにやたら と視界に飛び込んでくるのが「ツー・ファイブ」だと思うのですがいかがでしょうか。ある程度アドリブの練習をしてこら れている方にとっては耳にタコのような気がします。なにせこのサイトの理論関係の記事にも散々書いてきています。 また、アドリブを指導する側の方にとってもこのツー・ファィブは便利なのだと思います。このツー・ファイブ(・ワン)は、 五度進行、ドミナント・モーション、解決などの大事な理論的な要素を含んでいて、なおかつ、そのまま実践で役に立って しまいます。

ただ、このコード進行のパターン(ツー・ファイブ)を決められたフレーズで演奏できる事がアドリブそのものになっちゃって しまっては、実のところ-トンチンカン-です。あなたが参加しているバンドである楽曲を演奏しています。そしていよいよあ なたにソロが回ってきました。そしてアドリブという音の宇宙空間へ突入してゆきます。コード進行はこの楽曲特有のもので、 全体的なハーモニーの構造やコードの繋ぎは一定です。陸上競技のトラックと同じで一周400mを指定された回数を回ります。 ツー・ファイブが待ち構えているところは、いつも同じ場所で、運動会の障害物競走のように一か所のみの場合もあり複数 の場合もあります。それはさておき、あなたは気持ちよくアドリブを始めました。自由な発想と感性に身を任せてています。 で、ツー・ファイブに遭遇し、練習してきたツー・ファイブのフレーズを演奏しました。でもって、ここまでの気持ちよく演奏してき た感性や気分、そして得体の知れないフォースを遮断して別チャンネルにあるツー・ファイブのフレーズを演奏してしまったので、 それまでの流れをせき止めてしまうことになってしまいました。

ついつい長くなってしまいますのでこのあたりで止めておきますが、ツー・ファイブを演奏することと即興演奏は、もちろん 繋がってはいるもののツー・ファイブそのものが即興演奏ではないのだと思います。アドリブのための道具の一つです。こん なことを言うと身もふたもなく、そして自分自身が爆沈してしまうことになるかも知れませんが、あえて言わせていただきますと ツー・ファイブが襲ってきても「吹かなくていい」のですし、かえってお邪魔虫になっちゃったりすることも無きにしもあらずです。 ツー・ファイブが来たらツー・ファイブのフレーズを吹かないといけない理由などありません。カッコよくツー・ファイブを吹けるこ ととカッコイイアドリブとは別物のような気がします。

むむ・・ちょっと極端ですが、楽器を演奏することが下手くそでも「ググ・・」とくる演奏はいくらでもありますよ。反対に めちゃくちゃ楽器を上手く演奏出来ているのに「???」なんてのも多々あります。40年も前のジャズ雑誌のレコード・レビューで あえて個人名を使わせていただくことをお許しいただいて「アーチー・シェップ氏は音程悪い、音色がひどい、バップ・フレーズ がない、リズム悪い」等、細かいところまでは憶えていないのですが要はくそみそにけなしていたレビューだったように思いますが、 -トンチンカン-だと思いました。 はっきり言ってそのレコードから湧き上がってくる音からは、あまりツー・ファイブのフレーズなん て聞こえてきませんし、確かに音程悪かったですけど、なのに・・今聞いてもググッときます。・・・それってすごいです。


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