アドリブ(即興演奏)てなに?

ポピュラー・ジャズ音楽理論講座

ジャズのアドリブ

誰が始めたのか。

昔からあった

人類史上、最初に奏でられた音楽は、きっと情動的なエネルギーなどが原動力となって生まれてきたものでしょうから、今で言う即興だったと思います。 音楽的なものは、もともと即興から始まっているようですがら「即興演奏」というのは、かなり本来的なものなのかもしれません。クラシック 音楽の大家の方々も即興演奏の名手だったようです。民族音楽の世界においても即興がその演奏のかなりの部分を占めている場合が多いようです。そして 「Jazz音楽」もこの「即興演奏」とは切っても切れない関係にあります。 Jazz音楽の「即興演奏・アドリブ・インプロビゼーション」 Jazz音楽でいう「即興演奏」には一定のガイドラインがあります。「ガイドライン」といいましたが「ルール」と言い換えてもいいかもしれません。 ただ、「ルール」と言ってしまうと「・・・しなければならないもの!!」のような破ってはいけないもののようなニュアンスを感じでしまいそうなの で「ガイドライン」という風な言葉にしました。ジャズ音楽には特有の個性を持ったいくつかの演奏スタイルがありますが、ここでは、「Be-Bop」 という演奏スタイルについて考えてみます。そこで、小学校か中学校の音楽の授業で最初の方で学んだ、「音楽の三要素」を交えながらお話し ましょう。三要素とは、「メロディー」「ハーモニー」「リズム」のことです。

●アドリブの概略

あるジャズのライブハウスです。テナー・サックス、ピアノ、ベース、ドラムスの伝統的なカルテットが今まさに演奏しようとしています。 あなたはテナー・サックスのプレイヤーで、今から実際に曲を演奏しようとしているとします。メンバーと相談の上、演奏する楽曲が決まり ました。もちろん、あなたが普段から演奏している曲ですが、暗譜するまでには至っていないので譜面を見て演奏する事にしました。 演奏が始まろうとしています。そしてテンポがカウントされて、ピアノ・プレイヤーのイントロが始まりました。少し緊張していま すが、いい感じの緊張感です。出されたテンポとピアノ・プレイヤーの奏でるイントロをあなたの身体全部で感じながら、さらにそこから感じるサムシ ングをあなたのサックスに吹き込んでテーマを演奏しようとしています。そしてついにあなたの出番がやってきました。つまり、あなたはフロン トですからテーマのメロディーを演奏する役割を担っています。譜面を読みながら最初の音に全神経を集中します。そして、おもむろにバンド全体 でもって合奏が始まりました。さて、あなたはベース・プレイヤーのしっかりした基礎の上に、ピアノ・プレイヤーが敷いてくれた絨毯を踏みしめ、ドラム・ プレイヤーの奏でる歩調に乗っかってメロディーを奏でてゆきます。今あなたの演奏するメロディーは、あらかじめ大枠が決められています。なぜなら、 バンドのメンバーみんなで演奏する曲を決めました。つまり、今演奏している曲のメロディーはこの曲固有のメロディーで、この曲のアイデンティティー そのものです。

さて、ここでこの場空気全体から感じるままに何かしかのメロディーなり音なりを演奏しだしたとすれば、それは「即興演奏」が始まりだしたといえるかもしれません。 元々の曲の和声進行(コード進行)とテンポの土台の乗っかってあなた自身の、この瞬間に感じるメロディーなり音を奏でることは、実に創造的で、ちょっと 極端ですが宇宙的作業です。(この理論講座の大本は「スター・トレック」なのですが途中からページをご覧になった方はご存知ないかもしれませんので。) また、普通のジャズ音楽の演奏はこの曲の本来のメロディー(テーマ)を演奏し終わってから、自分たち風に料理してゆくのです。つまり、この曲全体をモチー フにして即興演奏を始めるのですが、フロントのテナー・サックス・プレイヤーのあなたは、この曲の和声進行、メロディー、そしてテンポの大地 に乗っかって「即興演奏」をするわけです。もう少し不確定で定量的でないことまで言う事を許してもらえるなら、今まさに演奏し始めるあなた自身の「気分的 な何か」も演奏に影響してきます。もともと芸術関係の物事で定量的に量れるものなどは、ないのでしょうね。というのもいい気分の時に浮かんでくるメロディー といい気分でない時に浮かんでくるメロディーが同じであるはずがありません。この辺りの事は自分自身でコントロールしているようですが、大概の場合、 出来ないものだと思ってまちがいありません。つまり、だから音楽なのだと思い、また、即興演奏は面白いと思えるのですが。特にJazz音楽家のジャズ・クラブ などでの「ライブ」の演奏はそのまんま、言い換えればありのままが音になって出て来るので面白いと思え、また、興味津々です。「CD」などの録音媒体では、 そのあたりの面白みを聞くことはなかなか出来ませんので、是非、ライブにもお越しください。すみません。「ライブ」の宣伝になってしまいました。

次は、あなたがもし、ピアノ・プレイヤーであった場合は、どんな感じになるのでしょうか。曲が決まってテンポも決まりました。イントロダクションを考えて 何小節を演奏し曲の本編にみんなを導かないといけません。いろいろな事を考えなければなりませんが、多分、上記のテナー・サックス・プレイヤーよりも 多くのことを考えないといけないかもしれません。ここに上げてみると、「キーは何か」、「テンポとリズムは」、「和声進行は」、「小節数は」などです。 テーマの本編に入ってからは、あらかじめ決まっている和声進行を全員の合奏の中でメロディー、リズムとともに表現してゆきます。メンバーの中では最もバランス 感覚を磨かれるポジションかもしれません。「テンポ」「コード進行」「リズム(ボサノバ、ラテンなど)」は、きっちり決まっていますが、しかしながら、詳細に ついては決まっていません。この「詳細」というのは、次のようなものです。あなたはコードの演奏ますがそのコードを構成する音の積み方はあなた任せです。また、 そのコードをこの曲の和声進行の決められた順序とテンポ、リズムのなかでどのタイミングで弾こうがあなたの自由です。もっと言えば弾かなくてもいいのです。 あらかじめ決まっているものは、テンポ(それも実際はメトロノーム的でなくなる定速テンポ)、和声進行(ボイシングは、あなたの自由)、メロディーの概略(プレイヤー によって違う)、リズム・拍子の種類(途中で変わる場合もある)です。

次は、あなたがもし、ベース・プレイヤーであった場合は、どんな感じになるのでしょうか。ピアノ・プレイヤーの奏でるイントロダクションを聞きながらそのイントロ からインスパイヤーされつつ本編のテーマ部のコード進行とテンポ、リズムに向かって集中します。さて、この曲はボサノバのリズムで演奏されることがあらかじめ決め られていたとしますとボサノバのリズム・パターンを心に準備しておく必要があります。ボサノバのベース・パターンは、一般的に一定の形がありますので各コードに対 しての大まかな音符の割り当てについてほぼ決まっています。ここでも上記と同じで詳細については、あなたの自由です。この詳細という言葉の意味は、また、次のページ にでも説明いたしますが、テナー・サックス・プレイヤー、ピアノ・プレイヤー、ベース・プレイヤー、ドラム・プレイヤー、各ポジションによってその中身が少しずつ ちがっています。テナー・サックス・プレイヤーがどんな風にメロディーを演奏し、ピアノ・プレイヤーがとせのようにコンピングしているのか、また、ドラム・プレイヤー のリズムはどんな感じなのかなどを感じながら、演奏を続けてゆきます。あるる意味で他のプレイヤーに較べると最も自由度が少ないと思える演奏することになるかもし れません。Swing(日本で言うところの4beat)を演奏する場合を考えて見ますと、普通、4/4拍子ですと1小節に四分音符が四つ均等に入ります。和声的に考えますと四つの 音でベーシックな和声、また、和声の繋がりを全体にわたって表現しつつ、他のプレイヤーの言ってることも聞かないといけないという立場は、どうでしょうか。不公平 だと思われる方もおられるかもしれません。私には、何とも言えません。どうなんでしょうか?。

次は、あなたがもし、ドラム・プレイヤーであった場合は、どんな感じになるのでしょうか。まず、ボサノバのリズムで演奏されるのですがら、ボサノバのリズムを 思い起こす必要があります。そして、テンポ。もし、あなたがバンドが演奏するにあたって「テンポを出す」という立場にあるのなら、そのテンポに集中しましょう。 あなたがテンポを出し、ピアノ・プレイヤーの生み出すイントロダクションを聞き、それを自分自身にしみこませて本編のテーマに向かってゆきましょう。基本は、 ボサノバですが上記で言いました「詳細」は、あなたの自由です。ドラムスの譜面を見ていただくと、いかに音楽的でない伝達方法だと思える方もおられることと思 います。音楽としての情報量は、リード・シート(メロディーとコードを記載した譜面)の方がずっと多いように思われます。ドラムスの譜面見てそこから立体的な 音楽を作ってゆう作業の間には、一段だけでなくの数段の段差があって、けっしてなだらかな勾配の坂道ではないような気がしてなりません。ドラム・プレイヤーの 場合、譜面がない状態でリードのみを渡して、「聞きながら」やってもらった方がよい結果が得られる場合が多いような気がします。ある意味で最も自由度の高い楽器 かもしれません。

●テナー・サックス・プレイヤーにとっての詳細

本来のメロディーをどのように演奏するのかは、各プレイヤーの音楽的個性といってもよいと思います。わざと何の感情や抑揚を紛れこまさ ないように演奏することはあっても、音楽を奏でようとしていて無感情でいることは、難しいかもしれません。コンピューターで計算されつく した音とくらべて、生身の人間の計算されてはいないが、自由に感じるままに演奏される音のほうが音楽として感じるものは多いような気がし ます。アドリブも計算されてあらかじめ作られているものではなく、あまり良くない言い方かもしれませんが、よい意味での行き当たりばったりの音楽だと いえるかもしれません。すみません、違う方向に行きそうになってしまいました。さてさて、メロディーのお話の続きです。メロディーの各音 の音符の長さや、休符の作り方、アクセント、スタッカートなどのアーティキュレーションなどを色々に駆使してメロディーに自分自身の魂を 吹き込んでゆくことができます。魂などとおおげさですね、自分自身の気分を注入してゆくことができます。Jazz音楽においては、テーマであっ ても各プレイヤーによって個性的に変奏されてしまっている場合も多いのです。しかしながら、演奏されている曲がなんであるか知ることがで きます。その曲のメロディーの骨格はキープされたままになっています。まったくそのまま演奏される曲もあります。テーマがイコール、Jazz という風なメロディーをもった曲です。

●ピアノ・プレイヤーにとっての詳細

ここでは、テナーサックス・カルテットでのお話ですので、あなた以外にメロディーを演奏しているテナー・サックス・プレイヤー、和声進行の 土台を演奏してくれているベース・プレイヤー、そして、テンポとリズムをキープしてくれているドラム・プレイヤー、すべてのプレイヤーから 奏でられる音を自身の身体に取り込みながら、曲の進行に合わせて感じるままにコンピングします。コンピングするにあたってのコードの音の積み方、 音を出すタイミング、切るタイミングなどあなたの自由です。つまり、感じるままに即興しています。テンポ、リズム、コード進行のガイド・ライン の中で、即興演奏しているといってもいいような気がします。