楽譜を使わないアドリブのための基礎練習-2

ポピュラー・ジャズ音楽理論講座

アドリブ(即興演奏)-2

アドリブといってもいろいろな音楽スタイルによって現れてくる形も多少違っていますが、ここでは「Jazz音楽」で 言うところの「アドリブ」「インプロビゼーション」「即興演奏」についてお話しています。

まずは、アドリブを演奏する上でどんなことが必要なのかを考えてみると前ページでお話した

  • 楽曲テーマのメロディー
  • 楽曲テンポ
  • 楽曲リズムの種類
  • 楽曲ハーモニーの繋がり
  • プレイヤーが上記のそれぞれから、また、全体から感じるサムシング
  • プレイヤー自身の気持ちや体調からくるサムシング
  • その他のサムシング

サムシング、サムシングと繰り返して申し訳ありません。「ピートルズ」が好きですので「サムシング」としただけです。 「サムシング」という言葉自体は、本題とはなんの関係もありません。だだ「ビートルズの作り方」という本は、 この理論講座をお読みになっておられる方には参考になると思いますのでお知らせしておきます。

いずれにしても、楽器をお使いになって音楽をされる場合は、まず、最初に

  • 楽器コントロールする技術

となるかもしれません。楽器をコントロールする技術に関しては、それぞれの楽器の練習を通してだんだんと習熟していただくとして、 もっと大きく、ザックリと

  • 気分
  • 実分

に分けてしまうことにします。

※「気分」については後日にお話しするとしてまずは「実分」についてなのですが、みなさんもご存知のように 「気分と実分」は融合し化学反応をおこして別の物質になってこそ「アドリブ」なのだと思うのですが、あえて別々にしています。

実分

さて、アドリブを演奏するにあたっての必要不可欠の「物理的技術」の一つは、「音を奏でることが出来る」ということでしょうか。 ピアノは指などで鍵盤を一定のスピード以上で押し込めば音を奏でることができます。ギターは、弦を弾くか爪弾けば空気中に音を放てます。ただし、 管楽器は音を奏でること自体に一定の普段は使わないような特殊な技術が必要とされますので息を吹き込めば鳴るという風にはならないかも知れません。 楽器を手じかにお持ちでない方で声を発することができる方であれば、「お声」をお使いになればいいと思います。 (ご参考までに フレーズ日記帖part1,2,3,4も作成しましたので、興味のある方はご覧ください。 それから、こんなのもあります。 アドリブのための頭の体操-基礎編 上)

さて、「音を奏でる」ことができれば、とりあえず、音空間に足を踏み入れることができます。「音を出す」これって動物の基本的な性向なのかもしれませんね。 さて、お一人で楽しむ場合などは、とにかく音を奏でる事ができれば、それで必要にして十分なのですが「どなたかと一緒に演奏する」、「何かを他の人に伝える」 となるとある程度のルールが必要になってくるのかも知れません。「一度だけ叫んだら、楽しい」、「二回叫んだら、腹減った!!」など、「ジャズの歴史」を扱って おられる書物に出てくる「トーキング・ドラム」みたいな感じでしょうか。でも、またまた、横道にそれてきているようなのでもとに戻します。

楽器・声を操れる一定の技術をもっておられるならば、これから先のお話は役に立つかもしれません。まず、アドリブを勉強するためにいくつかのだれにでも 手の届く素材の練習をしましょう。ただし、ここで言っている「アドリブ」というのは、一般的なJazz音楽で言うところの「アドリブ」です。まず、具体的な メロディーとハーモニーとリズムを持った曲があって、それを変奏するというような意味でのアドリブです。まったくそのような具体的な素材なしで即興演奏 を始めることもあります。

分散和音(Arpeggio)

さて、「分散和音」と聞いて、「一抜けた」(前回のアドリブ(即興演奏)-1)でも同じことを言いましたっけ)と思われた方は相当練習されたのだと思います。 なおかつ、多分、あまり楽しくはなかったのだと推測します。練習を楽しむことが出来るようになると練習したくなるし、ひいては上手くなりますから言うことなしです。 でも、それはなかなか難しいと思います。無味乾燥に思える練習も実はすごく意味のある練習なのだということを忘れないようにしていただければなと思うしだいです。 一つの解決策として、ゲーム感覚で練習してみてはということを提案したいと思うのですがいかがでしょうか。最近の若い方は、 ゲームをわれわれの世代よりも、もつと身近に感じておられることと思いますが、さらなるたかみを目指して各ステージを一つ一つクリアしてゆきましょう。

分散和音の実践的練習-1

まずは、前回の「音階」が基本になります。各長音階に十分に親しんでおられることが必要です。前ページでご紹介した「音階練習」を再度チェックされて みてください。音階を練習されるときに各キーの音階を「ドレミファ・・・」で感じながら音をだすことで、「移動ド」というシステムに慣れ親しむことが できるようになります。「移動ド」と「固定ド」は、両者なかなか相容れないものなのですが、少しだけお話しておいた方が良いと思いますので、そのように します。

例えば、-F major key(へ長調)-の音階をご自身の楽器なりお声で奏でるさいに「ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ」という風に捉えて演奏されていると すると「固定ド」ということになります。前記と同じ音階を「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」という風に捉えて歌っている 方は「移動ド」で演奏していることになります。一般的に私の世代の方は「固定ド」での音楽教育を施されてきたのではないでし ょうか。小学生のころの音楽の授業で教科書にある五線譜の音符を歌うときの事を思い出してみると、「固定ド」で歌っていたのだなと思います。 中学校での音楽の授業、高校でのクラスでもそのようだったのだなぁと思い出せますので、少なくともバークリー音大に行くまでは、「移動ド」とい うことにまったく馴染みなく年齢を重ねてきたようです。

音の名づけ方には二種類あると思うのですが、その一つがここで話題にしている「ド・レ・ミ・・・」これを階名といい、もう一つ を「ハ・ニ・ホ・・・、C・D・E・・・」これを音名といいます。この「音名」と「階名」の使い方に少し混乱があって、その混乱が原因でさらなる 混乱を招いている場合が・無きにしもあらず・のような気がしています。

「移動ド」か「固定ド」かと問われれば、私の場合は、「移動ド」ということになるでしょうか。わたしは「Jazz」を演奏しますので特に「インプロビゼーション・アドリブ・即興演奏・アレンジ・作曲」などに関心 があります。いかにしてクリエィティブな演奏ができるようになるか(もちろん現在進行形です。まだまだ・・・ですから。)ということを考えて、その 上で練習を組み立てたり、気持ちを整えたりしているつもりですが、現実には、はっきり言ってアドリブを演奏しているときは、頭の中のどの部分が どのように動いたり感じたりしているのか理屈だてた筋道は皆目わかりませんのでご説明できません。。ただ、アドリブを実行するための色々な要素を抽象的な要素や個々の 楽器特有の要素をとり除いて無理やり単純化してしまうと、個々の「分散和音」と個々「音階」と「テンポ」と「リズム」ということになるでしょうか、かなり無理 やりという感じもしますが。で、「分散和音」ということです。

再び「移動ド」の話題に戻りますが、私の場合、実際にアドリブを行っている最中、ある楽曲においての個々の和音(コード)に感じる「移動ドの感じ方」、 その調子(キー)にたいして感じる「移動ドの感じ方」、その楽曲のある部分のメロディーにたいして感じる「移動ド」の感じ方があります。 つまり、各場面や小節、または、複数にまたがる小節群において、テンポなどの各条件にたいして自分にとって都合の良い移動ドの主音の「ド」を 決めているようです。このようにド(主音)の位置をその時々の自身の都合によって変えるのがはたして音楽的に見ていいのか悪いのかの判断は別におい て置いて、このやり方は私には好都合なのです。ビッグ・バンドやナインピース(6horns)のアレンジや作品を作る場合、巨匠のフレーズをコピーしたり するとき、アドリブの練習をするとき、メロディーやフレーズを口伝えで教えるとき、その他いろいろなところで役に立っています。何もかもドレミ・ ・・で表現してしまえるので比較的楽に理解できたり、理解していただいたり、伝えたりできます。自分自身の音のキャッチの仕方を整理してみたくなってきましたので、相当 横道にそれる感じがしますが、失礼してそのようにします。

譜面を読む場合

通常、書いてある譜面の音符を楽器で演奏する場合、音名で読んでいるようです。「A音ならA音、B音ならB音に対応したキーボタン、アンブシャー、息の入れ具合」 を音符の連なりなかでに音名でキャッチしています。基本的に調号無しでそれぞれの音符を独立して演奏しているようです。しかしながら、調性のはっきりしてい るメロディーに関しては、調号と「ドレミ・・」を感じて演奏しています。また、無調のような調性感のより少ないメロディーについても、自身の読みやすさという 点で、部分的に移動ドで「ドレミ・・」を感じて演奏している場合もあります。移調楽器が多い管楽器では、コンサートの譜面を移調しながら読譜する場合も多いの ですがそのような時は、「移動ド」で読んでいることも多々あります。私はテナー・サックス・プレイヤーですので、「Bb管の楽器」を演奏しています。フルートも演奏 しますがフルートは、「C管の楽器」ですから、コンサートの譜面(ピアノの譜面、In C の譜面)をそのまんま演奏すればいいのですが、テナー・サックスでもって コンサートの譜面を演奏するとなると-1オクターブ-と-メジャー・セカンド(M2、全音)-上げて演奏しなければなりません。そうしないと譜面に書かれているのと同じ メロディーや音を奏でることができません。でもって、アルト・サックスは、「Eb 管の楽器」ですから、・・・・・・、何てメンドクサイことか!! アマチュアの方々にお教えしているときに、しばしば起こる誤解は、「固定ド」「移動ド」を単に「音符の読み方の問題」として理解されてしまっている場合です。 このあたりは、なんでもないようでいて「即興演奏をしよう」とするにあたり、重要な要素の一つのような気がします。

・・・つづく・・・・・。

で、またまた、横道にそれてしまいそうです。すみません。次回。